EPISODE 1
北から入谷へ
硝子加工との出会い
グラスワークブレインの創業者・岡本好正と硝子との出会いは昭和50年代。北海道から上京し、専門学校でデザインを学んでいた好正は、偶然目にした硝子の加工技術に心を奪われます。硝子の世界に魅了された好正は、ロッキード事件が世間を騒がせていた昭和51年、東京都足立区入谷の硝子加工工場の一角でエッチング技術の習得を始めたのでした。入谷での創業
コツコツとエッチング技術を高め続け、好正は昭和53年に有限会社グラスワークブレインを発足します。入谷は硝子加工工場がひしめき合うエリア。この地でさらなる技術向上に努めていこうと強い志をもっての創業でした。職人たちの育成を進めながら、昭和55年には本格的にエッチングガラスの生産をスタート。昭和57年には株式化し、翌年にはタペストリー硝子の加工生産に着手しました。その後日本はバブル期へと突入。華々しい硝子加工は様々な建設現場からもてはやされ、当社への依頼も順調に増えていきました。愛情と智慧
昭和60年代には30人ほどの社員を抱えていた好正。人数が増えても、想いや志をひとつに技術を高めていこうと経営理念を掲げます。 GIVE BRAIN & TAKE BRAIN(知慧を貸し、知慧をいただく) GIVE AFFECTION & TAKE AFFECTION (愛を与え、愛をいただく) 今も色褪せないその言葉は、お客さまへの感謝、そしてお客さまや職人など周囲の方々とともに企業の成長を目指したいという好正の想いが詰まったものでした。社員一丸となってお客様のご依頼に応える日々。平成に入った頃には、当社にとって要となる高い技術力をもつ職人たちが育っていったのでした。
EPISODE 2
谷の心
経営危機
平成5年、創業者の岡本好正が急逝。当時の会社には多額の借金があり、廃業するかどうか悩んだ岡本家は、かねてから地元・北海道で深い親交のあった税理士の濱津和三郎に相談します。経営状態を確認し、会社を残せるかもしれないと一筋の光を感じた和三郎は出資を決意。経営改善にも奔走し、以前グラスワークブレインの経営に携わり、同じく再建を望んでいた長瀬弘にも協力を依頼します。和三郎の強力なバックアップのもと、長瀬は全力で会社の立て直しを図っていったのでした。数年後、長瀬は社長に就任し、さらなる経営安定を目指しますが、平成13年に病に倒れます。見舞いに訪れた和三郎は、彼の想いを汲み、次男の寿に経営を継がせると約束したのです。急な展開に驚くも、長瀬や和三郎の想いを受けとめた寿は平成14年に北海道から上京。硝子についてはもちろん、建築の施工管理や経理など幅広く仕事を覚えていったのでした。學び
入社後の寿は、他の社員たちとコミュニケーションを活発にとっていました。仕事以外でも楽しく交流を深めていましたが、徐々に社長になることを意識し始めます。仲良くなりすぎてしまえば、経営者として言うべきことも言えなくなるかもしれない…。そんな考えから、社員と距離を取り始めたのです。経営的な判断で行った社内改革が、周囲に受け入れてもらえなかったこともあり、社員との関係がうまくいかないこともありました。平成19年に正式に社長に就任するも、翌年にはリーマンショック。厳しい時代の洗礼を受けながらの経営者としてスタートでした。どうしたら経営状態が良くなるのか。社員とのよりよい関係づくりとは。経営者としての学びが必要であると感じた寿は、歴史や哲学など様々な學びを深めていき、会社経営の本質を見つめ直すようになりました。愛-谷の心-
堂々たる山の合間で目立たないながらも、様々な生きものを育み、包み込む“谷”の尊さを、中国では古来、「谷神」と言ったそうです。 決して見返りを求めず、偉大な働きを自画自賛することもなく… 『「谷」の心を「欠く」と書いて「欲」』 ある時、この言葉に目が留まった寿は、自分が今まで求めすぎていたのかもしれないと気付きます。 人を無理に動かし理想を追い求めるのではなく、 技術者の力を信じ、能力を活かせる愛ある環境をつくること。 それが自分のやるべき仕事なのだ、そう寿は心を改めるのでした。
EPISODE 3
愛され続ける製品を
愛と智慧の事業を
“谷の心”を忘れず、寿は社員たちの力を信じるようになっていきます。気持ちの持ち方は会社経営にも大きく関わるのだと痛感した寿は、スタッフと想いを共有すべく、企業理念の確立を目指し始めました。自社を改めて見つめる中で、硝子をただご要望通り納品するのではなく、愛と智慧を持ち、よりよいご提案をすることこそが自分たちの仕事であり、創業当時から変わらず受け継いできたものなのだと気付きます。企業の格となる一本筋が少しずつ見え始めたのでした。愛ある製品を
行動や結果は、愛があるか否かで大きく異なるものです。私たちは、お客さまにはもちろん、素材にも、製造にも輸送にも設置にも、深い「愛」をもち、細心の心配り、創意工夫を持って接することを大切にしてきました。だからこそ、私たちが生み出す硝子製品は、ひとつとして同じものはありません。愛を込め、愛され続ける製品を創ることは、家庭の幸せ、社会の幸せ、人類の幸せへとつながっていくと私たちは信じています。智慧と技
物事の善し悪しを正しく導き出す「智慧」に、長年磨き続けてきた職人・技術者としての「技」を掛け合わせることで、グラスワークブレインならではの他にはない硝子製品が生まれます。自分たちだからこそ提供できる価値の在り方を再認識した寿と社員たち。お客さまのご要望を超え、圧倒的なご満足をいただけるような製品を生み出していくため、智慧と技に磨きをかけていこうと一丸となったのでした。
EPILOGUE